最高裁を闘いぬいて~怒りをエネルギーに換えて~

 

 2012615日に提訴したハローワーク雇い止め裁判では、大変お世話になりました。一審二審は、住友裁判を闘われた先輩方の和解金をもとにした「働く女性の裁判基金」を使わせていただき、最高裁への費用は皆様方他たくさんの方々によるカンパによって賄えました。本当にありがとうございました。20166月中旬から集め始めた団体署名も、200を超える数を寄せていただきました。約44カ月の時間をかけて、この9月末日に敗訴が確定いたしました。最初に最高裁からの上告不受理の知らせを聞いたときは、悔しくて一晩眠れませんでしたが、それからあとは次の闘いへの作戦を考えることに頭を切り替えました。今、ワクワクしています。

 

HELLOWORK?ネーミングはこれでいいの?

雇用を安定させて民間を指導する立場にある国が、自ら労働行政の足元で安易な非正規切りを行うというアイロニー。仕事を紹介してくれるハローワークで働いてきた人間が、自分の仕事を失って元の自分の職場であるハローワークで仕事を探す、何とも言えないブラックジョークです。来春にもこういった世界が展開されるのでしょう。こんな国が他にあるでしょうか?

ハローワークではなくグッバイワーク公共職業不安定所です。

 

●セクハラは女性への暴力 

   その被害者支援者の仕事を奪うことも苛烈な暴力

 しかも背景には、職場のセクハラ相談員だった正規職員の男性が、私と同様の非常勤職員を狙ったセクハラ事件があります。その男性と親密な関係の人物が、非常勤職員の人事権を握っていました。不謹慎な言い方ですが、私自身がセクハラ被害者であったならどんなにやりやすかったでしょう。非婚を生きるシングルマザーの私が、「これから子どもにお金がかかるので、資格を取って収入を上げたい」と訴えた時に、「ええ男つかまえるこっちゃな」と間髪入れず言われたことを私は忘れません。女性差別に非正規差別が重なり、私はキャリアも生活基盤も同時に失うという大きな被害を受けました。子どもが高校に進学する春、通常よりも支出の多くなる春に、勧められた資格取得に貯金を使い果たし、蓄えもない状態で失職させられました。

 なんの後ろ盾も資産もないシングルマザーが仕事を失うことは、大げさではなく死がすぐそこまで迫ってくるような恐怖です。裁判官はほぼ間違いなくエリート、貧困の恐怖などまるで想像もできないのでしょう。

 

●非正規公務員のリアル

気に障ることの見当たらない時には、「安い給料でよくやってくれている」と持ち上げられ、一部でも上層部に気に入らないことがあれば、あっさりとクビを切られるのです。その職場で一番たくさんお礼状をいただいて、職員の見本になるべく研修講師を複数回担当しても、数々の講座を自腹で受講し、学校に通って勉強して、職場の上司が一発で受からなかった試験を受けて一発合格して資格を取っても、どんなに努力を重ねても、あたりまえの将来へ希望をつなげられないのです。まさに無法地帯です。どんなにいい仕事をしても、気に入らなくなれば放り出されてそれっきり。落とし前をつけてもらおうと試みましたが、下級審では取り付く島もない判決でした。そのことがおかしいと最高裁にまで上げましたが、私に及んだ理不尽な行為に「法律違反ではない」とお墨付きを与える結果となりました。「任用」という印籠さえあれば、パワハラもOK。究極の不利益を与えても官はお咎めなし。

働くものにとっては公務だろうが民間だろうが、同じ大切な仕事です。

「任用」という化け物が跋扈しています。何をしても責任を問われない戦争に似ています。

 

●これから私らしく生きる

 難しいことに挑んだという手ごたえはあります。日本の司法での闘いとしては終了しましたが、次があると思っています。私にできることはまだあるはずです。次はメディアだと考えています。そして外圧です。2013年にジュネーブまでロビイングに参加させていただき、お会いしたILO委員の女性へ、この結果について時間をかけて英文で手紙を書きました。まずは私信として書き送りました。これからの展開に今ひそかにワクワクしています。ものは考えようで、このワクワク感に包まれると、私は雇い止めに遭ったのも案外よかったのかも、なんてちらっと思ってしまいます。

インターネットTVにも呼んでいただきました。みのもんたさんの「よるバズ」という番組です。TV朝日のけやき坂スタジオでの生番組で、とにかくとても楽しめました。来年また予約をいただいています。ただ、ネットで検索していただきますと過去の放送内容が動画で出てくるのですが、上林陽治さんと私の出演した2016108日放送の♯25については消されています。なにか大きな権力が働いているのでしょうかといぶかりたくなります。

 

「意味のあることは、最初は矛盾したかたちであらわれる」(アーサー・ミラー)という言葉と、「人間の歴史は、虐げられたものの勝利を辛抱強く待っている」(ラビンドラナート・タゴール)の言葉を、今再び噛みしめています。

みなさま、ずっとたどってくださってありがとうございました。

 

                               時任玲子